コミュニカティブ·アプローチにおける指示詞の学習成果及び学習意欲に及ぼす効果
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【はじめに】日本語文型の教え方は従来のグラマティカル·アプローチ(GA)が主流であったが、近年、外国語を勉強する目的がコミュニケーション能力の習得とされ、学習者の勉強意欲を高め、授業の中心をコミュニケーション活動に置くなど、授業の内容を工夫したコミュニカティブ·アプローチ(CA)が中国でも提唱されてきた。外国語の学習目的も受験から実用性を強調することへ変化してきた。
本稿は中国語母語学習者が最も誤用しやすい日本語の指示詞を採り上げ、2種類のコミュニケーション活動の実験を行い、その効果を検討するものである。学習者の指示詞用法においての学習成果をテストで考察、また、学習意欲をアンケートで調査した。さらに、考察及び調査の結果を分析するとともに、高難易度の文型学習には2種類の教授実験を比較した。
【キーワード】コミュニカティブ·アプローチ;グラマティカル·アプローチ;教授法;指示詞
【中图分类号】H36 【文献标识码】A 【文章编号】2095-3089(2019)18-0114-02
一、教授法:CAとGA
2教授法は学習者の外国語学習についての意識に影響を及ぼすことが明らかであり、それぞれの特徴は下記(倉八,1993)のようになる。
中国では、日本語専攻の大学生が就活する際、最も重要な資格書類と言えば、学位以外は、恐らく日本語レベルを測る日本語能力試験の資格証明であろう。毎年、大勢の日本語学習者がこの試験を受けている。受験のためならば、意味に注目、コミュニケーションを重視するCAより、外国語の勉強基盤となる文型の構造を説明したり、誤りを訂正したりするGAの方がより効果があると言われている。しかし、言語の交際機能を果たす実用目的と、高い成績を取るための受験目的を両方達成するために、中国では教室活動の工夫を通して、C·B·Paulston(米)によって提出されたMMC体系(機械訓練Mechanical Drills ·意義訓練Meaningful Drills·交際訓練Communicative Drills)を有機的に配合することを踏まえ、GAとCAを結び付ける「折中法」という外国語教育方法が提出されてきた(陳,2013)。
二、日本語の指示詞及び中国語母語学習者の誤用
佐久間(1951)は、日本語の指示詞を「近称、中称、遠称、不定称」に区別し、「コソアド」と命名し、所謂コソア共存の三項対立(3元論)と指摘している。指示詞の用法は普通「現場指示」と「文脈指示」の二分け(正保,1981)から、「知覚指示」、「概念指示」、「絶対指示」を加えた五種類の用法(堀口,1990)に分類されてきた。また、品詞の立場から見てみると、指示詞は名詞、連体詞、副詞に跨り、「コソアド」と称されている体系に統合されるシリーズ的な存在でもある。
中國母語学習者にとって、指示詞と言えば、「这」と「那」の二項対立であり、日本語の三項対立の言語パターンは、極めて理解が困難であろう。実際、中国学習者はソとアの使い分けに困難が見られ、誤用例が一番多いカテゴリであるという調査結果が発表されている。(葉,2013)
外国語を勉強する際、誰もが誤用を犯す。その誤用の原因を分析、修正し、二度と犯さないように、長年の経験を積んだ上、教授法を改善しながら、より効率的に習得させるのが日本語教育においても、意義があることと考える。
三、方法
被験者は日本語専攻の大学2年生(初中級レベル)63名である。平行する2つのクラスでGA(31名)とCA(32名)をそれぞれ実施した。教授法は、文型の説明とグループ単位の規則についての練習活動を中心に行うGAとクラス単位と個人単位のコミュニケーション活動を中心に行うCAとした。被験者は全員1年間を通して、日本語の基礎知識を学び、そして合格した大学生であり、クラスは、語彙の既有知識(特に指示詞についての基礎知識)について事前筆頭テストと日本語に対する態度の事前調査を行った結果と、男女の性別も考慮した上、等しくなるように2つに分けられていた。
午前の授業は1回40分で、合計3回連続、下記のような流れ通りに、1人のベテラン教師(中国人)によってクラスごとに行われた。午後は学習成果を考察するための筆記テスト(100点満点)と学習意欲を調査するためのアンケート(10点満点)が実施された。また、ソとアの誤用、独立話題指示及び単純対応指示のような高難度文型の問題(10点満点)を筆記テスト(事後)に出題している。
四、結果と考察
2つの教授法の効果を考察するため、客観的な学習成果と主観的な情意面に関するデータについて検定分析を行い、下記の結果を得た。
1)客観的な成績(テストの総合点数と「ソとア」文型の得点)と情意面の意欲(日本語への意欲と自信度)について、対応のあるサンプルのT検定を行った上、客観的な成績について、また独立サンプルのT検定を行った。その結果は下記表①~②に示した。
事前と事後テストの結果から見てみると、CAとGA両方とも総合成績がアップするという結果が得られたため、2教授法とも有効な教授法であることを示している。一方、検定結果には差が見られた。有意差のないCAに対し、GAのほうは有意差が見られたゆえ、文法を中心とした筆頭テストについてはGAのほうが有利であることを示している。
また、誤用されやすい「ソとア」文型についての得点結果から見れば、両方とも有意差がみられなかったが、CAの得点が若干下がったように見えた。それは、恐らくCA教授法は「誤りの訂正」より「より適切な表現の選択」を重視するため、文型構造の説明が不充分であり、外国語学習の正確さへの転移効果が弱く、学習者達に曖昧なイメージを与えた結果、正確さにはマイナス効果をもたらしたと推測できる。今後、さらに検討していく必要があると思う。 学習者の学習意欲と自信度において、2教授法とも有意差が見られ、両方とも学習者の日本語への学習意欲を高める効果があり、有効な教授法であることを示している。
2)学習者の心理的な動きが、学習効果に大きく影響を与えていると考えられているため、本実験が実施された後、学習者に対して、心理的な動きを考察する「楽しさ」、「不安度」、「コミュニケーション活動への意欲」の3項目と、「参加度」、「理解度」、「学習効果」のような自己評価となる3項目についてCAとGAでのアンケー調査を行った。調査のデータについて、独立サンプルのT検定を行い、下記表③に示した。
「楽しさ」には有意差が見られ、CAのほうが受験者たちに愉快さを感じさせていると示している。それはCA教授法が自由度の高い学生自己表現活動や学生同士のインターアクションのような学生の主体的に参加する学習形態がメインなので、情意面にはプラス効果が働いたと思われる。「不安度」には有意差が見られない結果であった。教師は同じ中国人教師で、受験者は20歳前後の大人の大学生で、専門を日本語とした自らの自己意思が強いからと思われる。「コミュニケーション活動への意欲」に関しての有意確率は0.051で、有意差は見られなかった。それは、受験者の個人差により交互作用に影響されたと考えられる。今後、多様性のある教室活動を試み、さらに検討する必要があると思う。
五、まとめ
本研究は、大学生学習者を対象とし、高難易度の文型について、コミュニケーション活動を行う教授法CAと文の構造を説明する教授法GAとを比較し、効果を出すために行った。
結果としては教授活動を行ったため、全体的な教育効果には両教授法の有効性が示されている一方、GAは文の構造についての勉強が中心であるため、筆記能力においてプラス効果がより著しく示されている。心理学的な意義は両方とも有効性が示され、学習効果への自己認識には差は見られなかった。CAは愉快な勉強という感情の面への喚起効果が見られるし、理解できた学習という自己評価にもプラス効果が見られるため、学習者が積極的に日本語を勉強するプラスの転移をもたらすことを示した。日本語に接するチャンスが少なく、自然習得が難しいという環境において、日本語を学ぶ学習者の自主学習能力を伸ばす効果があることが、CAの効果的な日本語教育での最も需要なポイントであろう。
日本語を含む外國語の学習は、聴、説、読、書(聞く、話す、読む、書く の方がいいのでは?)などを総合的な面からのものであり、単なる文型学習のみでは成り立たない。そして、大学4年間の学習ストラテジーは、前半が基礎知識をしっかり学び、後半がより一層レベルアップした日本語の実際応用が重点となっている学習プロセスであるため、GA或いはCAのみの教授法はどの段階でも不十分であろう。それぞれ教育段階の目的に応じて、最終的には実用目的と受験目的を両方達成するため、教材及び教室活動などに工夫した「折衷法」という授業法は相互作用が働き、相互補完的に採用されるべきであろう。
学習者達が自主的に学習できる能力を養成することは教育者の重要課題であるゆえ、各学習段階の目標と語彙能力スキルの特徴に応じて、形式、内容、効果などを総合的に考え、各教授法を組合せた教育実践の効果に注目した検討がなされる必要がある。
参考文献:
[1]倉八順子.外国語学習における情意要因についての考察[J] .社会学研究科紀要.1991第33号.
[2]倉八順子.コミュニカティプ·アプローチ及び外国語講師とのティームーティーチングが学習成果と学習意欲い及ばす効果[J].教育心理学研究.1993第41号.
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